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王女様の不埒な暴走
第11章 物語の結末は



 それはカーネーションだった。もう五年前になるか……少女だったリンゼイとジョシュアがこの庭園の隅にある四阿〈アズマヤ〉で向かい合い、一緒に紡いだ赤いカーネーション。


 このハンカチーフがあの日の物かは解らないが、ジョシュアが覚えていたのだけは確かだ。


(ああ……ジョシュアさん……)


 リンゼイの双眸からまた涙が溢れてくる。


 誰よりも愛する人にこんなにも愛されていて、どうしてその手を離そうと思えたのか。


 リンゼイのすべてをジョシュアが占め、ただただ涙していると


「リンゼイ! ようやく逢えた!」


 その声にリンゼイは泣き濡れた顔で振り返る。


「ス……チュワート……なんで……」


 彼がそこに立っているのだろうか。彼は現在、領地で起った落石の対応に追われているはずなのに。


「なんではないだろ? リンゼイに逢いたくて来たんだ」


 スチュワートは両手を広げ、リンゼイに近づいてくる。リンゼイは知らず、一歩後ずさった。


「なあ、リンゼイ。俺と結婚しよう?」


 にこやかな笑みを貼り付けてはいるが、なんとなく可笑しい。どこがおかしいかは混乱しているリンゼイにはっきりと解らないが、纏う雰囲気に異常さを本能的に感じていた。




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