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王女様の不埒な暴走
第11章 物語の結末は




「よかった……。間に合いました」


 安堵の声に聞き覚えがあり、リンゼイを見詰めるサファイア色にも見覚えがある。けれど自分が見ているものが信じられず、リンゼイは口許を手で覆って小さく首を振る。


「リンゼイ様? どこか打たれましたか? 大丈夫ですか?」


 なかなか声を発しようとしないリンゼイに、焦った声で彼は矢継ぎ早に質問してきた。


「う……そ。だって……」


「なにが嘘なんですか」


 クスリと笑う彼──ジョシュアは、手袋の嵌められていない指をリンゼイの頬にそっと這わす。


「また泣いておいでだったんですか。申し訳ありません。泣かせたのは私ですよね」


 頬に残る涙を拭い、ジョシュアは優しく微笑む。


「ジョ……シュアさん? 本当に?」


「もう私の顔をお忘れですか」


「忘れるはず……ないです! お逢いしたかった!」


 彼だ。彼が来てくれたのだ。


 忘れるはずはない。ジョシュアの黄金を思わせる髪も、気高いサファイア色の瞳も、リンゼイを優しく包み込む逞しい腕も。


 全部、全部覚えている。


 リンゼイは彼の首に腕を回し、ギュッとしがみつき、本当に来てくれたのだと、夢ではないんだと実感した。




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