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王女様の不埒な暴走
第2章 姫は運命に抗らう




「いいかい? たとえリンゼイの望みが叶ったとして、その後はどうするつもりなんだい? 結婚もできず、一生後ろ指を指される可能性だってあるのに」


「お兄さまこそ、本気でおっしゃってますの?」


 兄からの非難めいた問いを、イレーネは毅然と受け止める。


「リンゼイはこのカンターヌの王女よ。処女を奪ったとあらば、必ず責任は取らなければ、ね?」


 嫣然と微笑むイレーネ。


「つまりそれは……既成事実を作って相手をものにしようと……?」


 イレーネは笑みを浮かべたまま小さく頷く。


 リンゼイにはついさっき兄にも指摘されたようなことを仄めかしたが、あれはリンゼイの覚悟を知るためだ。ひとときの幸せのためにリンゼイの願いを叶えるべく協力するなど、妹をこよなく愛するイレーネにとっては有りえない。


「それで本当にリンゼイが幸せになる確信はあるのかい? 先に既成事実を作って、その男と夫婦になれても、愛のない結婚でリンゼイが幸せになれるって、イレーネは思うの?」


「あら、お兄さま。家族の欲目抜きにしても、リンゼイがとても愛らしいと思うのは私だけかしら」


「もちろん僕もそう思う。リンゼイはカンターヌに降り立った妖精なんだから」


「でしょう? そりゃあ心も手に入れられるよう、リンゼイには頑張ってもらわなきゃならないけれど、リンゼイほどの女性に惹かれない男性はいないわ。肌を合わせてしまえば尚更です。すぐに虜になってしまいますわ。これは確信ではなく、確定です」


 きっぱりと言い切るイレーネに兄は眼を見張ったあと、苦笑いを零した。






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