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王女様の不埒な暴走
第2章 姫は運命に抗らう



「それで? 僕は何をすればいいんだい?」


 イレーネの説得に折れ始めたのか、兄は溜め息交じりに言う。


「簡単なことですわ。まずリンゼイのラインハルト行きを私と一緒にお父さまを説得して欲しいの。それから王家に伝わる"秘薬"を一瓶調達してくださる?」


 事も無げに言い放つイレーネに反し、兄は眼を見張った。


「どちらも簡単じゃないじゃないか!」


「そうですか?」


「そうですかって……。まったくキミって人は……我が妹ながら厄介な女だよ」


「ふふ。お褒めにいただいて光栄ですわ」


「褒めてないよ」


 重く深い嘆息をする兄を尻目にイレーネは至極愉快そうにクスクスと肩を揺らす。そして兄の協力を得られたと早速リンゼイに報告するため、部屋を出ようと立ち上がると。


「待って。重要なことを聞き忘れていた。リンゼイの相手は誰なんだい? あんまりな相手だったら協力し兼ねるけど」


「ああ、それでしたら問題ございませんわ」


 イレーネはそう言って兄へと近づき、相手の名を耳打ちする。


「なっ──!?」


「ね? 申し分ないお相手でしょう?」


 イレーネが嫣然と笑うと、驚愕に眼を丸くしていた兄は顎に指をかけ、何かを考え込んだ。








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