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王女様の不埒な暴走
第2章 姫は運命に抗らう



「ねぇ……。その方ならこんな回りくどいやり方をせず、正式に婚姻の締結を申し込んだほうがいいんじゃないか? スチュワートは可哀想だけど、父上だってこの婚約をひっくり返しても認めてくださるよ」


 兄の言うことは正論だ。イレーネの計画は回りくどく、失敗すれば……いや、そもそもが危険と波乱を伴う。もっと円滑に、そして平和的に事を進めようとするならば、兄の言うとおり正式に申し込めばいいだけなのだが。


「お兄さまはお義姉さまと恋愛をされ、ご結婚されたからわからないかもしれませんが……。私やリンゼイ──王族に生まれた女が政略結婚するのは当然ですが、恋愛することさえ望めませんでした」


 古い因習の残るカンターヌでは、王家の威信を守るため、繁栄のために女が犠牲になるのは常。どれだけ恵まれた生活をしていても、結局は籠の鳥だった。


 イレーネもまた、どれだけ彼女に恋焦がれる男性がいて、その中の誰かに恋をしても、最初から叶わぬ恋だと諦め、自身に待ち受ける運命を受け入れるしかなかった。王家のため、家族のため、そして国のために。


「私は幸運なほうですわ。夫はとても優しくて、今ではもちろん彼を愛しています。でも今まで王家の女がどれだけ不幸な結婚を強いられてきたか、歴史を学べば明らかです。リンゼイもまた……これまであの子を見てきて、とてもじゃないけどスチュワートと幸せになれるとお思いでして?」


「それは……」









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