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王女様の不埒な暴走
第2章 姫は運命に抗らう




「お兄さま。私はね、なにも面白がってこの計画を決行しようとしているんじゃありませんの。国の思惑だとか、政略だとか関係なく、リンゼイ自身の手でお相手の心を射止め、望む結婚をして欲しいのよ」


 イレーネもリンゼイと同じ年の頃、淡い恋心を抱いた人がいた。だが慣例に倣い、父の決めた相手と結婚が決まり、幾度となく涙した夜を過ごしたものだ。もう昔のことではあるし、先ほど兄に告げたよう、今では夫を愛している。


 けれどリンゼイには妹としてではなく、同じ女として自分と同じ思いをして欲しくなかった。


 危険や波乱があったとしても、たとえ上手くいかなかったとしても。"あの時こうしておけばよかった"などと、後悔を胸に秘めたまま、この先長い人生を生きて欲しくはないのだ。


「……わかったよ」


 兄はイレーネの意を汲んでくれたのか、長い睫毛を見せ神妙に頷いた。


「秘薬は難しいかもしれないけど、ラインハルトに行けるよう尽力する。ただ行けたとしても、決して無茶だけはしないようにリンゼイに伝えて」


「ありがとうございます、お兄さま」


「礼は早いよ。父上を説得出来てからにして」


 妹を想う気持ちは兄とて負けてないだろうことは、固い決意を宿す瞳から伝わってきた。


 まだ次期国王たる王太子として頼りないところもある兄ではあるが、その決意をイレーネは信じたのだった。










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