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王女様の不埒な暴走
第2章 姫は運命に抗らう



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「ならん! 絶対にならんぞ! 結婚を控えた娘がこの時期に、ラインハルトへ行こうなどと……なんと馬鹿げたことを!」


 数日前、リンゼイの声が響いていた父の書斎で、今度は父の声が響いてる。怒鳴られているのは久方ぶりに顔を揃えた三兄妹だ。


 父は革張りの椅子に座り、怒鳴りながら机にこぶしを打ち、厳しい眼差しで三人を捉えている。


 兄を中央に姉と挟んで立つリンゼイは、父の怒りは当然のことで、許してはもらえないだろうと思ってはいたが、やはり予想通りの反応だった。


 だがリンゼイは進んで父を説得したい気持ちを抑え、口を噤み必死で耐えていた。なぜならそうしろと姉から言われていたからだ。


(秘策があるからってお姉さまはおっしゃっていたけど……本当に大丈夫なのかしら)


 説得は自分と兄がするから、リンゼイにはいつも通り大人しくしていろと言い付けられ、そうするしかないのだが、父のこの様子では到底事が上手く運ぶとは思えず心配でならない。


「大体、なぜ行く必要がある? あと数ヶ月もすればスチュワートと結婚するのだから、他にやることがあるだろう」


 父はリンゼイを厳しくねめつける。既に父の中で結婚は決定したも同然の物言いだ。リンゼイは一層不安に駆られた。






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