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王女様の不埒な暴走
第2章 姫は運命に抗らう
ふむ……と、思案する父をここぞとばかりに兄は畳み掛ける。
「僕の調べによれば、今でしたらラインハルトの王太子も通っているとのこと。彼にリンゼイを頼めば、父上だって安心でしょう? 彼の人柄は父上もご存知のはず。国民からも多大な信頼を得ています。宿泊先もあちらの王城にお願いすれば、身の安全も保障されます」
「だが年頃の娘を他国に行かせるのは……」
「私が書簡を送り、万一のことがないようお願いしますのでご安心を。それに他国で学ぶのはリンゼイにとって……いえ、この国にとって悪い話ではないはずです。王家と姻戚を結ぶ伯爵家は公爵の位を賜り、今後この国にとって重要な地位になります。スチュワートも近い将来国政に深く携わっていくでしょう。その妻となるリンゼイが他国の知識を得て、得になることはあっても、損するなどないでしょう?」
父と兄は暫し視線を交わし合う。
兄の言葉はカンターヌの未来を慮るそれを窺わせ、単なるリンゼイの我が儘で留学を推しているのではないと伝えている。──あくまでも父を説得する戯言だと知るリンゼイは、真実が明るみに出たとき兄の立場を悪くするのでは、と別の意味で不安になる。
けれど父にラインハルト行きを申し出た時点で、もう後戻り出来ないのだ。黙って見守るしかない。
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