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王女様の不埒な暴走
第2章 姫は運命に抗らう




「お嬢さま。スチュワート様がお見えです。お通ししてもよろしいですか」


 今、最も逢いたくない人物の訪問にリンゼイは姉と顔を見合わせる。姉はリンゼイの手を軽く叩くと「お通しして」と告げた。


「リンゼイ! ……と、これはこれは義姉上様。お久しぶりです」


 声を荒らげ押し入って来たスチュワートだったが、姉の姿を認め、紳士的な振る舞いをする。


 くせのあるダークブラウンの髪は整髪剤で強引に撫でつけられ、翡翠色の双眸や、やや太めの眉をはっきりと見せる。着ている物も上質で、貴族然としてはいるが、丸みを帯びる鼻梁がそうさせているのか、彼は年齢を重ねるごとに無骨さも増したような容貌だ。


 落ち着きを払い柔らかな物腰の兄が傍にいるせいか、昔と変わらず彼の横暴で傲慢な態度がリンゼイは苦手でならない。


「お久しぶり、スチュワート。婚約はまだなんだから、義姉はやめてくださる?」


「なにをおっしゃいますか。すでに決まったも同然。それにイレーネ様は幼少の頃より姉弟も同然の関係でしたのに、今さらですよ」


「あら、私には兄と妹しかいなかったはずだけど」


「ではこれから弟もできますね」


 姉の冷たい態度などどこ吹く風のスチュワート。その彼に姉の苛立ちが肌に伝わってくるようだったが、スチュワートは気にもせず訪ねてきた本題に移った。








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