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王女様の不埒な暴走
第1章 物語のような恋の始まり
「いい加減にしろよ! なにが気に食わないんだ!? せっかくリンゼイが喜ぶだろうと用意してきたのに!」
いい加減にして欲しいのはリンゼイのほうだ。本気で嫌がっているのに、どうして彼は解ってくれないのだろう。
ミルウッド伯爵家の嫡男であるスチュワートならば、他に遊び相手はいくらでもいるだろうのに。
すでに社交界デビューを果たした彼は、いずれ妻となる人を探すにも忙しいはずなのに。
大人の仲間入りをしていても、スチュワートは玩具を手放せない子供なのだろうか。
リンゼイは泣きべそをかきながら、どんどん追いついてくる彼の気配を背中にひしひしと感じつつ、一分一秒でも早く彼が大人になってはくれないだろかと切に願う──余裕などなく、形振り構わず走るのが精一杯で。
「おい、リンゼイ! 危ない! 前を見ろ!!」
彼の促す注意は耳に入れども、どうせそう言ってリンゼイの足を止める算段なのだと高を括っていると。
唐突にぐらり、と視界が揺れた。
すでに涙で滲んでいた視界。それが急に自分の思惑とは全く別の方向に傾いていたのだ。
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