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王女様の不埒な暴走
第1章 物語のような恋の始まり



 景色が回り、上下に向いていた建物が横を向く。身体が刹那宙に浮いた錯覚を覚えるのも束の間、恐怖に声も出ない。


 生まれてより住み慣れた城であるのに、スチュワートから逃げるのに必死になるあまり、階段があるのを失念してしまっていた。


「リンゼイ!!」


 まさに今、階段から落ちようとするリンゼイの名を渾身の力で呼び、追いかけてくるスチュワートの声。


 彼の忠告をきちんと聞いてさえすれば、このような事態にはならなかっただろうのに。


 嫌っていても縋るもの欲しさに間に合うはずもない彼へとリンゼイは無意識に腕を伸ばすも、その行為が無意味であるのは落ちながらも頭の片隅で悟っていた。


 一段、一段はさほど落差のない階段ではあるが、長く緩やかに庭園へと続くそれ。


 猛烈な勢いで走っていた勢いに身体の自由はきかず、当然来るであろう衝撃に声もなく顔を歪め。


 いやにゆっくりと感じる落ちゆく流れにリンゼイは抗う術のないまま、恐怖を湛える双眸を固く閉じた。







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