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王女様の不埒な暴走
第2章 姫は運命に抗らう



 慌てて扉を開けると、姉は滑り込むように中へと入る。


「ごめんなさいね。もう寝ていたかしら?」


「いいえ。でもどうなさったの? こんな夜更けに……」


 姉が小声で話すものだから、リンゼイもつられてついつい小声になる。


「あまり人に見られたくなかったから。これをあなたに渡したくて」


 姉は手に握りしめていた物をリンゼイに握らせる。固い質感の物だ。


 なんだろうと不思議に思い広げて見てみると、ラベンダー色の細長いクリスタルの小瓶だった。


「これは?」


「それはね、王家に伝わる秘薬よ」


 オイルランプのオレンジ色に照らされる姉は、昼間よりも一層妖艶さを増した笑みをリンゼイに向ける。


「秘薬……?」


「そうよ。ようやく手に入れられて……といっても、少し前にはもう手にしていたんだけれど、色々とあって渡すのが遅くなってしまったの」


「お姉さま?」


「ああ、ごめんなさい。リンゼイはまだ秘薬のことを知らなかったかしら」


 姉はたしか"王家に伝わる"と言ったけれど、リンゼイはこれまでそんな話を聞いたことがない。突然怪しげな物を渡され、しかもこんな夜中に人目を忍ぶよう訪れて、リンゼイが怪訝に首を横に振るのは仕方のないことだ。


 姉は得心がいったように頷くと、扉付近では人に聞かれるといけないからとリンゼイの手を引いて部屋の奥にあるバスルームに続く脱衣所まで引っ張っていった。





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