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王女様の不埒な暴走
第3章 恋、煩わせる




「羨ましいわ……」


「え?」


「あ、いえ……。カンターヌの貴族の多くは使用人を人とも思わず、ぞんざいに扱う人が多いの。私はそれが堪らなく嫌で、ずっと疑問だったから」


 スチュワートがそのいい例だ。身分で言えばリンゼイのほうが高いはずなのに、彼は伯爵家嫡男という立場と、父から眼にかけてもらえている思い上がりから、矜持が異常なほど高いのだ。


「ラインハルトにもそういった貴族の方はいらっしゃいますよ。ここが特別なんです」


「そうなの……。でもこれが当たり前になるといいわね。身分なんてものはあらゆる偶然から与えられたものでしょ? 偶然王家に生まれ、偶然平民に生まれ。なのに自分が偉いんだと勘違いしてしまう。自分で得た力じゃないのにね」


 疑問に思い可笑しいと訴えたところで、簡単に捨てられないのが身分というものなのもまた事実だ。


「リンゼイ様はお優しいんですね」


「そんなことは……」


「実はこれでも少し緊張していたんです。なんて言ったって他国の王女さまですし、難しい方だったらどうしようって。でも安心しました!」


 この会話を機にライラとの距離がぐっと縮まったわけだが、彼女は数日間隠していたのか思ったよりも面白い女性だった。





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