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王女様の不埒な暴走
第3章 恋、煩わせる




「ご無理をなさらずとも。手の空いている者はおりますので」


「い、いいえ! 無理なんてしてませんから」


 ジョシュアに着替えさせてもらうなんて、本心では恥ずかしくて卒倒しそうだったが、リンゼイの最終目標は彼と結ばれることだ。これしきのことで動じていては、先が思いやられてしまうではないか。


「では明日からは他の者を……」


「いえ、ジョシュアさんにお願いしたいです。……ダメ、ですか?」


「……リンゼイ様がそれでよろしいのでしたら」


 頬をリンゴのように染め、潤む瞳で問うリンゼイに対し、ジョシュアは眉ひとつ動かさずに答える。それがリンゼイの心にチクリと棘を刺す。


 困らせてしまっただろうか。それとも彼のことだ。仮初めの主人の我が儘を仕事と割り切っているだろうか。


 表情を崩さない彼の心が読めず、不安になる。コルセットのリボンを締めるため背を向けてしまうと彼の顔が見れず、一層読めなくなる。


 時折り肌を掠める手袋越しのジョシュアの指に甘い痺れが走り、リンゼイは切なく眼を細める。


 ジョシュアは大人の男で、子供っぽいリンゼイの着替えを手伝うことくらい大したことではないかもしれないが、自分だけドキドキしているのが悲しくなる。


 少しくらい意識してくれてもいいのに……。







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