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王女様の不埒な暴走
第3章 恋、煩わせる
そういえばこの国に来てからジョシュアが微笑んでくれたのは初めてかもしれない。あまり緊張せず、滑らかに会話を交わせたのも初めてだ。
これから難解な数字と向き合うのが憂鬱だと思っていたのが、僅かと言えど彼の笑みを見れただけで、どんなに難しい数式も解けてしまいそうな気がする。我ながら現金で単純だと、リンゼイはこっそり肩を竦めた。
「こちらとこちらが参考になると思います。あとはそうですね……こちらなんかも、丁寧な解説が載っておりますので、お持ちします」
ここの図書室もカンターヌのものと見劣りしないくらい素晴らしい図書室だった。壁一面の本棚には貴重な書物から庶民が読むような軽い書物までぎっしりと詰め込まれ、静かで重厚な造りはまさに本好きの楽園だ。
驚くべきは溢れかえる書物から、的確にリンゼイの必要とする本を探してくるジョシュアの優秀さだ。普段から王城に仕えているならいざ知らず、彼はレオナルドの邸にいるはずなのに。
リンゼイがジョシュアのテキパキとした動きに圧倒されているうちに、必要なものはすべて揃ってしまった。
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