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王女様の不埒な暴走
第3章 恋、煩わせる
こうして図書室にいると、思い出すのはカンターヌで彼の資料集めを手伝ったときのことだ。懐かしさが込み上げる。
「ふふっ」
「どうかされましたか?」
「あ……いえ。ただ昔もこういうことがあったなって」
「そういえば……。以前は立場が逆でしたね」
ジョシュアも懐かしそうに眼を細める。
「お、覚えててくださったんですか?」
リンゼイにとってはジョシュアとの大切な思い出だが、てっきり彼は些細な日常の出来事と忘れてしまっているものだと思っていた。
「もちろんでございます。お小さい身体で一生懸命図書室を走り回って。私に本の置き場所を教えて下さる姿は、とてもお可愛らしかったですよ」
彼と思い出を共有できた歓びに、涙が出そうになるくらい嬉しい。
こういうなんでもないときに、ジョシュアが好きだと実感する。
リンゼイが好きな作家が物語の中でこう言っていた。“人を愛するのは理屈ではない。頭なんてなんの役にも立たないものだ。ただ心が教えてくれた通りに従えばいい”と。
本当にそうだ。ジョシュアとの思い出は少なくて。恋に落ちたのは一瞬だ。
理屈では到底説明できない感情が、リンゼイを遠く離れた国まで連れて来てしまったのだ。
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