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王女様の不埒な暴走
第3章 恋、煩わせる
口許を指先で覆い、涙が薄っすらと滲む瞳でジョシュアを見上げるリンゼイを、彼は気遣わしげに見遣る。
「どうなされました? なにかお気に障ることでも言いましたか?」
「ちが……そうじゃないんです」
リンゼイは頭部の横でレースのリボンで二つに結ぶトゥーヘアードを揺らし、かぶりを振る。
一度溢れだした感情は、止める理性という壁を突き破り溢れてくる。
「わ……私……」
声が震え、感情と呼応するかのように眦〈マナジリ〉から涙が一筋溢れてしまう。
「ジョシュアさんが好……」
言いかけた言葉を遮ったのは、白い手袋を嵌めたジョシュアの指だ。唇にそっと当たる絹の肌触り。
驚きに見開かれたリンゼイの、スカイブルートパーズ色の双眸が捉えるジョシュアは、先程まで和やかな雰囲気で話していたのが嘘のように、翳った表情をしている。
「それ以上はおっしゃらないでください。私もなにも聞かなかったことにいたしますので」
スッとジョシュアの指が唇から離れると、彼はわざとらしいくらいに穏やかな笑みを浮かべる。
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