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王女様の不埒な暴走
第4章 執事の噂と王女様の暴走



「シュトワール侯爵の愛娘……キャンディス嬢です」


 ライラが言うには、キャンディスはリンゼイのひとつ下の16歳。半年ほど前社交界デビューをした女性だ。


「そのキャンディス様がどうしたの?」


「どうもこうも、ジョシュアさんに言い寄るご令嬢のひとりなんですってば!」


「え……」


「私の聞いた情報によると、そのキャンディス様とジョシュアさん、かなり怪しいらしいんです。他のご令嬢に言い寄られても、あの堅物……もとい、真面目なジョシュアさんはまったく相手にしなかったんですが。キャンディス様に限っては、ふたりで時折り抜け出すって噂もあるんですよ」


 レオナルドの警護を兼ねて夜会に同行するジョシュアは、夜会の最中別室や馬車で待っている。そこへ夜会に出席したキャンディスは貴族令息と踊らず、こっそり抜け出してジョシュアの元へ行き、密会しているらしい。


「それ……確かなの?」


 ジョシュアがモテるというのは度々聞かされてきた。けれど特定の誰かと恋人同士という話は聞かなかったから、リンゼイはまだ自分にもチャンスがあると安堵していたのに。


「リンゼイ様のお気持ちを聞いてから、私もツテを辿ってジョシュアさんに関する話を集めてみたんです。そしたら……」


 ライラは最後まで言葉を紡がなかったが、表情がすべてを物語っていた。


 これはただの噂なんかじゃない、と。





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