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王女様の不埒な暴走
第4章 執事の噂と王女様の暴走



(疑っていたらキリがないわよね……。駄目よ、リンゼイ! 前向きに、前向きに)


 二人の会話を聞きつつ、自らに言い聞かせる。


「そうそう、殿下。聞いてくださいな」


 夫人がおもむろにキャンディスの肩を抱く。


「この度、めでたく我が娘の結婚が決まったんですのよ!」


 ――え?


 嬉しそうに話す夫人の声に、思わずリンゼイは眼を見張る。


「ええ、聞き及んでおります」


「まぁ、そうでしたか! まだ身内にしか知らせていないのに、話が広まるのは早いものですわね」


「いいじゃないか。めでたい話だ。広がって困ることじゃないさ」


「あなた……。そうね」


 娘の結婚が余程嬉しいのか、侯爵と夫人は幸せそうに微笑みあう。


 キャンディスの結婚相手は知らないが、侯爵令嬢の身分だ。相手もそれなりの身分だろう。


 ということは、ジョシュアとの噂はやはりただの噂ということだろうか。


「キャンディス嬢、おめでとう」


「おめでとうございます、キャンディス様」


 レオナルドが祝いを述べ、考え事をしていたリンゼイも、慌ててそれに倣う。


「ありがとうございます……」


 ジョシュアとはなんでもないのかも、という吉兆が見え、声が弾むリンゼイとは対照的に、キャンディスの表情が微かに曇ったのをリンゼイは見た。





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