この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
王女様の不埒な暴走
第4章 執事の噂と王女様の暴走
(疑っていたらキリがないわよね……。駄目よ、リンゼイ! 前向きに、前向きに)
二人の会話を聞きつつ、自らに言い聞かせる。
「そうそう、殿下。聞いてくださいな」
夫人がおもむろにキャンディスの肩を抱く。
「この度、めでたく我が娘の結婚が決まったんですのよ!」
――え?
嬉しそうに話す夫人の声に、思わずリンゼイは眼を見張る。
「ええ、聞き及んでおります」
「まぁ、そうでしたか! まだ身内にしか知らせていないのに、話が広まるのは早いものですわね」
「いいじゃないか。めでたい話だ。広がって困ることじゃないさ」
「あなた……。そうね」
娘の結婚が余程嬉しいのか、侯爵と夫人は幸せそうに微笑みあう。
キャンディスの結婚相手は知らないが、侯爵令嬢の身分だ。相手もそれなりの身分だろう。
ということは、ジョシュアとの噂はやはりただの噂ということだろうか。
「キャンディス嬢、おめでとう」
「おめでとうございます、キャンディス様」
レオナルドが祝いを述べ、考え事をしていたリンゼイも、慌ててそれに倣う。
「ありがとうございます……」
ジョシュアとはなんでもないのかも、という吉兆が見え、声が弾むリンゼイとは対照的に、キャンディスの表情が微かに曇ったのをリンゼイは見た。
.