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王女様の不埒な暴走
第4章 執事の噂と王女様の暴走
夜会は楽団による演奏が流れる中、賑わいを見せる。
リンゼイは王都国立学校で出来た友人と歓談をしたり、レオナルドをパートナーにダンスを踊ったりもした。
他に恋人がいて、自分に興味のない男性と踊るのは不思議と気軽で。あんなにも男性と密着するのが嫌だったのが、レオナルドはこの国での兄のような存在でもあり、彼と踊るのに不快感は覚えなかった。
もちろん最初こそ抵抗はあったが、皆の注目や勧めがあるのに、他国で我が儘を通すわけにもいかず、しぶしぶ踊ったのが始まりだった。
「あまり気負わず、気軽な気持ちで踊って下さい。私のことは兄だと思って。ジュド殿下には敵わないまでも、こちらにいる間は王女の兄として努めますので」
彼もリンゼイを妹のように思ってくれているらしく、その言葉で、頑なに拒み続けていた男性とのダンスを、楽しく踊ることが出来たのだ。
ダンスが終わり、渇いた喉を潤そうと、近くにいた給仕が銀のトレイで運ぶワインを受け取ったときだ。
周りを気にしながらキャンディスが部屋から抜け出すのを目撃する。
「あの、殿下。申し訳ありません。少々席を外します」
「え? どちらへ?」
「すみません、すぐに戻りますから」
ライラにも言われていた。キャンディスの動向を気にするように、と。あんな風に周りの眼を気にしながら、そっと抜けて行くのだ。何かあるかもしれない。
リンゼイは頭で考えるよりも早く、彼女を追わなければと思い立ち、受け取ったグラスには一口も口をつけず給仕に押しやり、レオナルドにはそそくさと言い訳をし、見失わないうちに急いで後を追った。
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