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王女様の不埒な暴走
第4章 執事の噂と王女様の暴走
キャンディスの翳った表情を見たときから、嫌な予感はあった。
リンゼイには解る。彼女はこの結婚を望んでいないのだ。
自らの立場と彼女が重なり、たとえジョシュアと恋仲にあっても、結婚がふたりを引き離すだろうと手放しで喜べない。
好きな相手以外と結婚する苦しさを、他の誰よりもリンゼイ自身が解るからだ。
キャンディスに気取られないようそっと後を追いつつ、胸が苦しくなる。廊下の角に隠れ、ときに柱の陰に隠れ。足音は毛足の長い絨毯が消してくれて。
やがて彼女は邸を抜け出し、裏手にある森の方へと消えていく。
リンゼイもやや距離を置き、見つからないように森へ入る。落ちている枯葉や小枝が乾いた音を鳴らし、気付かれるのではと冷や冷やしながらも、彼女の姿を探した。
すると低く抑える男女の声がした。キャンディスが誰かと密会しているのは、これで確定してしまう。
ダンスの名残と緊張から、喉が渇きで引き攣る。心臓は嫌な音を奏でていた。
見なければいいのに、聞かなければいいのに。訴える声は自分のものだったが、ジョシュアであって欲しくないと、なけなしの望みにかけてしまう自分もまたいた。
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