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王女様の不埒な暴走
第4章 執事の噂と王女様の暴走




「レオ、ナルド様……」


 彼の存在を認めたものの、謝罪する言葉も浮かばない。泣き腫らした虚ろな眼を向けている自覚もなかった。


「泣いておられたんですか? どうかなさいましたか?」


「あ……」


 リンゼイは咄嗟に顔を背ける。


「なんでもありませんわ。申し訳ありません。ご心配おかけしてしまいましたね」


「……お疲れでしたら、城に戻りますか」


 レオナルドは泣いていた理由を追究せずにいてくれた。その心遣いがとても有り難かった。


 リンゼイはこれ以上ここにはいたくなく、レオナルドの申し出に頷く。


「わかりました。付き添って差し上げたいのですが……」


「大丈夫です。ひとりで帰れますから」


 レオナルドが共に帰るとあらば、当然ジョシュアも一緒ということだ。とてもじゃないが今はまだ、彼の顔を見る勇気がない。


 それに夜会を主賓の両名が席を外せば、侯爵に失礼だ。


「王女。少々こちらでお待ちください。馬車の手配をしてきますので」


 レオナルドはそう言って邸に引き返し、すぐさまリンゼイの元へ戻ってきた。


「立てますか」


 彼に支えられ、力の入らない足で立ち上がる。覚束ない足取りでレオナルドに連れ添われ、馬車の停まる場所までどうにか歩いた。




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