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理想と偽装の向こう側
第11章 亀裂
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「グィーン…」


マンションのオートロックを開け、エレベーターに乗り、嘉之の部屋に上がる。


「ガチャ」


鍵を回し、ドアを開け中に入る。


「た、だいま…」


何気にそんなことを呟いてみたりした。


手を洗い、スーパーで少し買ってきた物を冷蔵庫に入れ、簡単なモノを作り始める。


正直、複雑だな…。 


距離を置こうとしたのに、結局この様だし。


抱き締められて、キスされて…
肌を重ねても、核心には触れられない。


元木さんのことも簡単にあしらえる感じに言うけど、最初からそのつもりだったのかな。


何で、私の前で…
約束するの…

私たちの関係、知られたくないからかな…
まぁ…彼女にだけは、知られたくないけど。


嘉之の好きなクリームシチューをかき混ぜ続け、悶々と考えていた。


一時間くらい経ちシチューも出来上がり、やることが特にな、掃除機をかけ始めた。


なんかしてないと落ち着かない。


それも終わってしまったので、お風呂掃除をしてみた。


「入っちゃおうかな…」


でも、いつ帰ってくるか分からないしな…。


シャワーで泡を流し、乾いたタオルで水気を拭き取った。

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