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理想と偽装の向こう側
第12章 板ばさみ
ギクッ!
な、何だ!


また、先週みたいになったらどうしよう…
ドキドキしながら聞き返す。


「…どうしたの?」


嘉之はシートベルトを外し座席を後ろに下げ、ハンドルに両腕を載せて前屈みで私の方に顔を向けた。


「来月か再来月辺りに一端イタリアに行ってくる。今回は下準備も兼ねてなんだけど、来年からは長期滞在する予定なんだ」


「凄いね…本当に本格的に動いていくんだ」


素直に感嘆した。


「元は、香織たちとのプロジェクトのお陰もあるけどな…。」


嘉之は照れくさそうに、笑った。


この顔も好きだったな…ふと


「あれ…車どうするの?」


「ああ…来年は兄貴たちに貸すけど様子見の時は…香織エンジン掛けといてよ」


「えっ!私が!」


「マンションに置いとくからさバッテリー上がっちまうしな」


改まって何かと思えば、バッテリーかぁ~!


「はぁ…分かったよ。じゃあ、またね!」


車から出ようとしたら…


「香織も一緒に行かない…イタリア」


………はい?今なんと?


「えっ!私も!」


「来年からでいいからさ。香織行きたがってたじゃん!」


そういう次元じゃなくて!


「どれくらい、居るの?」


「とりあえず…2年は居るな」


2年…って…。

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