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理想と偽装の向こう側
第15章 発動
小田切さんが上がってくる前に、部屋に戻らないと…。


口をすすぎたいが、洗面所は使えないからキッチンに向かう。


「ジャーーー!!」


シンクが水を跳ね返し、顔に水滴を付ける。


いつまで…

こんな状態が続くんだろう…。


いつまで…
続けられる訳ない…。


「うっ…くっ…」


込み上げる吐き気に、身体より心が痛む。


小田切さんとの別れを突き付けられるから…。


「やだよ…小田切さん…」


「俺がなんだって?」


え…。


「わぁっ~!!」


「はははっ!二人しかいないのに、そんな驚かなくても」


小田切さんは頭にタオルを載せ、両手で髪を拭きながら爆笑している。 


「そ…だね。考えてごとしてたから、ボーとしてたんだよ」


「ふ~ん…考え事?」


小田切さんはチラッと水が出っぱなしの蛇口に目をやり、手を伸ばし水栓を上げて水を止めながら、


「アイツ…?」

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