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理想と偽装の向こう側
第2章 出会い
「傷…」


「えっ?」


「お互いの傷、ひたすら舐め合おう」


私には、この状況も言葉の意味も理解の範疇を超えていて、ただ呆然としていたけど、男の瞳を逸らすことは出来ないでいた。


冗談を言ってる瞳には、思えなかったから…。


男性は更に言葉を続け


「偽装を前提に、俺と同棲してよ」


………。

はい?

今何とおっしゃりましたかね?


「ど、ど、同棲ぃ~っ??」


驚くしかない。
そんな事、いきなりあり得る訳がない。
でも、男は


「そっ!」


と、ニコッ歯が輝いて見えるくらいの満面の笑みで答え、たて続けて話し出す。


「偽装前提だから、ルームシェアだと思えばいいよ。お互い束縛する事もない、家事も自分の分だけやればいい。家賃は、俺が払うから君は一円も払わなくていい」


はい、そうですか!
って、承諾する訳ないけど余りにも条件が良過ぎる。


「あの~いきなりもさることながら、条件が良過ぎるし、正直胡散臭いんですが…。例えば私じゃなくても、はい是非っ!って言わないかと…」


頭と心を落ち着かせながら、この場を逃げきる算段をたてようとしたが、私の話しを聞いている彼の瞳が、凄い慈しみに満ちていて、徐々に引き込まれていく。


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