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理想と偽装の向こう側
第16章 懐古
「本当!良かった~!緊張したぁ~!」


嬉しさから、本音が出てしまった。


「えぇ!小田切さんって、緊張するんですか!?」


どんなイメージだ?


「普通にするよ~!徒競走とかなんて、毎回ドキドキしてたよ!」


突然の話の流れに、一瞬間が空いたが


「私もドキドキしましたぁ~!転けたらどうしようって!」 


「思ったよね!」


「はい!」


急に場が和む…これも彼女の天然パワーかもしれない。


肩の力が抜けていく…

彼女が自然体なら、俺も自然体でいればいいんだろう。


「これ、俺の連絡先。仕事一段落したらでいいから、連絡もらえる?」


携帯番号とアドレスを書いたメモを水越さんは、両手で大事そうに受け取り、口元に持っていって、 


「はい!必ず連絡します!」


元気よく答えて、微笑む。


ドキンッ!


胸ぐらを鷲掴みにされた感覚だ。


何もかもが、可愛いく感じてしまう。


ベタ惚れじゃん、俺っ!


思わず笑いそうになった。


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