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理想と偽装の向こう側
第16章 懐古
「だから…今日、誘ってもらえて…一緒にいられて凄い嬉しくて…」


両手を胸元に当て、照れながら水越さんは、俺を見詰め


「本当に凄い優しい人でした。今日は本当にありがとうございました」


花の蕾が、綻びるように微笑む。


夕日の光に照らされて、彼女の美しさが輝きを増す。


今すぐ抱き締めたくなった…。


ダメだ…
飾った言葉なんて何一つ思い浮かばない。


人生経験も何の意味も持たない…

伝えたい言葉は、これだけだった。


俺は、自然と言っていた…。


「好きです…」


瞬間、水越さんは眼を見開く。


「一目惚れだった。会った瞬間から、水越さんのことで頭いっぱいで…毎日考えてた」


「小田切…さん…」


唾を飲み込み、続ける


「一目惚れなんて…軽く思われるかもしれないけど…俺自身も初めてで…でも水越さんを…好きで仕方ない自分がいた」


「あ…私…」


彼女は俯いてしまったが、勇気を振り絞る…。


「俺と…付き合って下さい!」


言った!


瞬間


「ごめんなさい!」

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