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理想と偽装の向こう側
第6章 予測不可能
木曜日


朝、顔を洗いに洗面所に向かうと、最近すっかり当たり前になった光景が、まず目に飛び込む。


朝からエプロン姿の小田切さんが、裏切ることない笑顔を向ける。


「香織ん、おはよう!よく寝れた?」


「…お陰様で…すみません…本当に。ベッドまで、運んでもらったんですよ」


「帰って来たら、床に何か転がってるから驚いて、見たら香織んなんだもんなぁ~」


めっちゃ笑いながら、言われてしまった。


「はあ…ついつい…」


「今度から頑張って、ベッドまで行って寝ないとだよ」


はい…ごもっともなんですが、貴方を待ってたもんで…なんて言えやしないよ。


「重かったですよね…本当にスミマセン」


「ははは。大丈夫だよ~一応男だから俺も、そこそこ力はあるし、意外に軽かったし。」


意外に…?


敢えて突っ込まずに、しておこう…。


俯いてる私の頭に小田切さんの手が乗っかり、目線までしゃがんで、覗きこむ。


「あんな所で寝てら、風邪ひくからさ。支度してきな、朝ごはん食べよう!」


いつもより一際の笑顔を向けられ、思わず眩しくて立ち眩みしてしまいそうだ。


プリンス小田切!!!


…何か、色んなアダ名が出来上がってくるなぁ。


でも、心配してくれたんだ。
本当に気を付けよう。


支度をして食べる朝食は本当に美味しくて、一日元気で頑張ろうと思う。


「香織ん、明日は早く帰れるから駅前のレンタル屋で待ち合わせしよ」


「はい、レンタル屋ですね」


「色んなDVD借りて来て土曜日に一日中、上映会しよ!」


「一日中?!朝から晩まで?」


「そっ!」


小田切さんは、無邪気に笑った。


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