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異世界のイケメンに脱童貞させてくれとお願いされている
第1章 壁に穴が空いた
硬直から先にとけたのは男の方だった。
「あ、あ、あ、あなた様は、もしや……」
つっかえているのはともかく、発音の綺麗な日本語だ。もしかして日本育ちなのかな。外見だけで国籍を判断するのも差別的かと思って口には出さないでおくけども。
壁の穴から、乾燥したわたしの部屋とは違う空気が流れ込んでくる。清涼、とでもいった感じだろうか。少し冷たいのだが、肌寒いというよりは神聖な印象の方が強い。男の立っている場所が、ゲームに出てきそうな白い神殿風の建物のせいもあるだろう。
「も、もしかして、自分の願いをお聞き届けくださったのですか?」
いや、よく聞くと、この男がしゃべってるのは日本語じゃないぞ?
わたしは日本語しか話せない。それなのになぜ彼の言っていることが理解できるのだろう。
「ありがとうございます! ありがとうございます!」
騎士風の男は体育会系のペコペコお辞儀を繰り返した。そして穴の向こうからにゅっと体を乗り出してくる。
「ひぃえええええ?」
そこでようやくわたしは悲鳴をあげた。
「な、なん?! だ、だれっ? ていうか、なにしてんじゃあああああ!」