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そのキスは許されていない……
第2章 私の妻(おんな)
「だから今夜は、お前の目を通し、見て思ってきた事を聞きたい……」

優しい声色のまま私の方に向き直り、きっぱりと言い放った。

「そして佐伯。私は、お前のその心の内が……

本心が知りたい」

私は目を見開き、大旦那様から視線を逸らした。

大旦那様はこんなことをおっしゃって、一体何がしたいのだろう?

普段と変わらずお嬢様の旅行に付き従えば

こんな目には合わずに済んだものを……

でも屋敷に残るように命じたのは……

このわけのわからない茶番のようなことをしている目の前の主。


そんな私の黒い物思いを引き裂くように女が口を開いた……

「旦那様……

私はこの人が好きです」

はぁ?!!!これから何が始まるんだ?!!


その時受けた衝撃は今でも覚えている。

躰に稲妻が走り、胸に大きな杭を打ち込まれたような気がした。

この苗字すらうる覚えのような女に好意を抱かれていることを、

よもや大旦那様にこんな時告白されるとは……

私はこれ以上ないほど目を見開き身構えた。


「でもこの人は……

この人の瞳に移るのはただお一人」

女の悲しげな声色に、大旦那様が眉を下げる。

その後が予想できた私は心の中で思わずやめろ!!と叫んだ。

「この人は……

間違いなく、お嬢様を愛されています」
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