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そのキスは許されていない……
第2章 私の妻(おんな)
しばし沈黙。衝撃を含むピリッとした冷たい空気が部屋の中を満たした。

その重い空気を破ったのは、大旦那様の低く響く声だった。

「佐伯……

それは本当なのか?」

静かに尋ねられ……

私は揺れる気持ちを押し殺し、力強く首を横に振った。


「とんでもございません。

確かに私の目にはお嬢様しか映っていないのは事実です。

でもそれは、私がお仕えする方だからであって……

「今夜はお前の本音が聞きたいから呼んだ。

それがお前のここから出た本心なのか?」

大旦那様は私の話を遮り、ご自分の胸を掴みこちらを刺すように見つめた。

その瞳に沈む暗いモノを見つけてしまい……

心の奥底が揺さぶられる。


私は……

私は……

その何かを宿して迫ってくる瞳を、まっすぐ見つめることができきらず、

さりげない素振りをしながら、女の方に視線を流し逸らした。


この女はなんてことを言うのだろう?

どうしてこのタイミングに、こんなことを……


困惑が一気に心を満たした。

気持ちが落ち着かずそわそわとして、

早くこんな部屋を出てしまいたいと切に願った。


部屋に戻りってもう眠りたい……

無理とわかっていても、一目夢の中でもいいからお嬢様に……

お会いしたいと思った。
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