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そのキスは許されていない……
第1章 私は貴女のモノ。でも貴女は…
あの男がどんなセックスで、お嬢様を絶頂に導くのか

伺知る気もなくどうでもいいことだが、

あなたがそろそろ限界を迎えるだろうことはその声のトーンでわかる。

熱を帯び男の躰をしゃにむに求める艶声を盗み聞きながら……

こんな役回りの自分を幾度呪っただろうか?


私はお嬢様が18歳で実家を出て大学に通われる事が決まった時、

ボディーガードも兼ねてマンションの隣室に住み

身の回りのお世話をすることになった。

そこまでの信頼を得ても、主従の関係は乗り越えられなかった……


「あなたぁ~、たくさん、たくさん胎内(なか)にちょうだぃ~」

あの男が射精さえしてくれれば、それで全てが終わる。

私の心にどす黒いモノが渦巻き、嫉妬心が湧き上がる。


何かを堪え切れなくなっておもむろに携帯を開き……

[今夜、帰る]と高速で入力したメールを送信した。


「ああああああああぁぁぁ~」

かすかに聞こえる人の躰がぶつかり合う破裂音の刻むリズムが速くなり

絶叫するお嬢様の声がワントーン上がる。

もうじき、ソノ瞬間(とき)がくる……

私は目を硬く閉じ歯を食いしばって、ただ時が行き過ぎるのを耐えた。


掌にあった携帯がブルブルと震えて、気を逸らすようにメールを開いた。

[畏まりました。お帰りをお待ち致しております……]

その文字で私の心が少しだけ凪いだ。
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