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女子大生 成宮恵理
第28章 ごめん
「いやだって、また奈々が来たらヤバいじゃん?」
「う、うん……そうだけど、でも……」
「大丈夫だって、こっそり出ればバレないから。」
「あの、そういう事じゃなくて」
「とにかく、あんまり余計な心配すんなって、な?」
そう言って悠一郎は恵理の肩を励ますようにポンポンと叩くと、帰る準備を始めた。
確かにまた奈々が来たら大変だ。
恵理も今はこれ以上悠一郎に何か答えを求めるような事はできなかった。
「じゃあ俺、帰るな。」
「う、うん……」
そして悠一郎は玄関へ向かい、音を立てないようにドアを開けると、体勢を低くしながら部屋を出ていった。
悠一郎が居なくなった恵理の部屋は、まるで嵐が去った後のようにシーンと静まり返っていた。
そう、悠一郎は昨日の台風のようにこの空間を掻き乱して、そして何事もなかったように風に乗って去って行ってしまった。
昨日見たもの、感じたものは夢だったのか。そんな風に思ってしまうほど、悠一郎と身体を重ねていた時間とのギャップを感じてしまう。
しかし、このまま虚ろな気持ちでボーっとしている訳にはいかない。
奈々に呼ばれているのだから。