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びっちカノジョ 【1期目】
第10章 Scene.09
 
 少しドキドキしながら扉を開ける。

「…いらっしゃい」

 ほっと一安心。

 木製のカウンターに立っていたのは、いかにも向こうの人種の宿屋のおばさん。

 恰幅の良いおばさんの人懐っこい笑みに胸を撫で下ろした。

 今まで数軒。

 宿のカウンターに居たのはこっちの人種だった。

 白のスケスケV字型水着装着のアタシを見た瞬間に追い出された。

 周りがコンクリートで出来た建物の間に、ひっそりと建っていた木造二階建ての宿屋。

 ダメ元で入ってみたら、あっちの人種で良かった。

 いい加減、宿を探すのも面倒臭くなってた。

「で、予定はどれくらいだね?」

 やはり、アタシの格好に何も言うこと無く話を進める。

「…出来れば…中長期くらい…居たいんだけど………」

 迷いに迷って数時間。

 元居た場所からどのくらい離れたかは分からない。

「それじゃぁ、一階の奥を使っておくれ」

 只でさえ懐が危うい。

 この街でも少し懐を暖かくしておきたかった。

「ありがとう」

 鍵を受け取り踵を返した。

「あぁ。商売するなら、何割か戴くからねぇ」

 抜かりないおばさんだった。
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