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隠匿シリーズ☆番外編
第5章 騒動の行方
瞳の色こそジゼルと同じ藍色をしているが、その髪は色彩に敏感なアリエッタからしても、紛うことなく彼の──レオのものと同色の月色。
生え揃い、ジゼルが優しく撫でるサイラスの艶やかな髪。アリエッタはそこに釘付けになっていれば。
「突然、こんなことを申し上げるのは私としても心苦しいのですが……」
伯爵は瞳を揺らすアリエッタに気遣わしげな視線を送ったあと、意を決したように続ける。
「孫は……サイラスは殿下のお子です」
伯爵が告げた瞬間、皆が息を呑む。ただ一人、レオを除いて。
しかしアリエッタは受けた衝撃に気が回らない。
(レオの……子供?)
予感が現実となってアリエッタを襲う。反芻すれば、ぐらりと景色が揺れ、暗転しそうになり。
胸が締め付けられ、息が詰まった。実際、数秒間息をするのを忘れ、呆然と瞠目する。
指先は引き潮のように体温が下がり、感覚すら危うい。
だのに心臓の音が耳の奥でするのだけは異様に鮮明で、他の音が掻き消える。
誰も言葉を発しないなか、伯爵は続ける。
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