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隠匿シリーズ☆番外編
第5章 騒動の行方

「聞いてくれ。俺は──」
「わかってるわ。私と逢う前のことでしょ? 本当に平気だから」
平気なわけがない。過去のことでもレオはジゼルと情を交わし、そしてサイラスが生まれたのだ。胸が焼き切れてしまうくらい苦しい。
それでもレオにこれ以上心配させたくなくて、精一杯の虚勢を張る。
「……それにサイラスに罪はないわ。彼もきっとレオに抱いて欲しいと思うの。だから行ってあげて」
アリエッタは知っている。以前、孤児院にいた子供たちは、親の顔を知らずともその面影を追い、温もりを求めていたことを。
「アリエッタ、キミは……」
レオは言いかけ、なにかを堪えるように拳を握り、アリエッタから眼を逸らした。
「……もういい。わかった。キミは先に帰ってろ」
レオは踵を返し、城の中へと戻っていく。
その背中は怒っているような、それでいて哀愁を漂わせていて。
自分が望んだことなのに突き放すように言われ、アリエッタは滲みそうになる涙を隠すよう、馬車に乗り込んだ。
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