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隠匿シリーズ☆番外編
第5章 騒動の行方

言い聞かせ、アリエッタは思考の修正を計る。
「ジゼル様。私から一度話してみます。サイラスに逢ってくれるよう、説得してみますね」
第一に考えるべきはサイラスだ。
疎まれ、憎まれてきた父親であっても。この年になっても父親が恋しいときだってある。温もりを知らないからこそ、サイラスがいずれ辿る道も理解してしまう。
「あ……ありがとうございます。アリエッタ様も複雑でいらっしゃるでしょうのに、承諾していただけて心から感謝いたしますわ」
「いえ……」
「私の望みはただひとつだけです。幼児のサイラスが殿下に抱かれて微笑む姿を見たいだけ。あの子が大きくなったときに、それを話してあげたいだけです」
ジゼルははらはらと涙を溢し、懸命に訴える。
「この先も他言はいたしません。もちろん、いずれ殿下とアリエッタ様の間に産まれるだろうお子を差し置いて……あ……」
「ジゼル様……?」
「いえ、なんでもございません。サイラスのこと、どうかよろしくお願いいたします」
言い淀んだジゼルはそれを振り払うよう、立ち上がって深々と頭を下げたのだった。
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