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隠匿シリーズ☆番外編
第5章 騒動の行方

幸せとは言えなかった幼少時代。両親の愛に飢え、行き違いから壊れてしまった妹との関係。
神へと嫁ぐと決まり、僅かばかり与えられた自由。そのとき、最愛の人との出逢いを経て、アリエッタの環境はがらりと変わった。
だがそれもこれも彼──レオがアリエッタを諦めず、捜し出してくれたから。アリエッタの努力と言えば、勘違いからレオの元から必死に逃げ出しただけ。彼の幸せのためではあったが、結果的にレオを苦しめてしまった。
欲しいものを欲しいと口にしない──自己を犠牲にすれば他者が自分が得られるはずだったものを別の誰かが得られるのではないか。それでその誰かが幸福になれればいい。そう考えてきたのだが。
(私……あの頃となにも変わってないわ)
国の安定を、レオの幸せをと言いながら、ただ逃げ出しているだけじゃないのか。向き合うことから恐れているだけじゃないのか。
レオの手でアリエッタは絡み取られていた呪縛から解き放たれたのに、アリエッタ自身はその場所から一歩も動いていなかった。
(私はどうしたいの?)
考えるまでもない。アリエッタの望みはただひとつ。
すくと立ち上がり、ナキラに馬車を頼み。
向かった先はもちろん、チャールトン伯爵邸だ。
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