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隠匿シリーズ☆番外編
第8章 次期執事は誰の手に
「ほ……本当に俺……いえ、私が執事に……?」
ディランを呼びつけたジョシュアは、レオが彼を次期執事として考えている旨を伝えると、青灰色の瞳を輝かせて訊ねてくる。
「あくまでも候補です」
「で、でも私の働き次第では昇進できるってことですよね!?」
「そう……ですね」
「──ッ!」
ディランは声もなく拳を腰の横に作り、満面の笑みで喜んでいる。その様を冷めた様子で眺めるジョシュアは、小さく息を吐いた。
彼──ディランは、深縹色の髪に青灰色の双眸を持ち、精悍な顔付きはジョシュアやレオほどではないがなかなかの美丈夫だ。背丈も長躯で、執事補佐を務めることがあるフットマンに相応しい容姿をしている。
レオへの忠誠も厚く、いくつかの問題点を除けばアッシュブラン邸の使用人の中でも信頼を置ける存在だ。
その問題点のひとつをジョシュアは静かに指摘する。
「ディラン。執事たる者、いついかなる時であっても冷静でなくてはなりません。お前のように感情をすぐ表に出していては務まりませんよ」
「は、はい! 肝に銘じます!」
そう答える彼の口許には、隠しきれない笑みが滲んでいて、本当に解っているのか不安になる。
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