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隠匿シリーズ☆番外編
第2章 王子様の憂鬱
婦人が集まるサロンも、芸術を深めるオペラ鑑賞も、遠くへの訪問も。いずれ王妃となるアリエッタには必要なことだ。
ただ遊びで母も連れ回しているだけではない。アリエッタのこれからを思ってのことだ。
彼女はこれまで父親から虐げられ、社交界デビューも一年ほど前にしたばかり。貴族の家に生まれながら、貴族の生活に馴染んでいない。
レオが支えるといっても限度がある。婦人同士の繋がりは、レオよりも母のほうが適任である。
もちろんそこは解っている。だがどうにも母はアリエッタを助ける名目だけで彼女と共に過ごしているようには思えない。
というのも母はアリエッタに隠れ、レオに向けて意地悪な笑みを浮かべるときがある。
『アリエッタは私の子よ』と言わんばかりの笑みを。
まさか結婚してからライバルが──それも実の母とアリエッタを取り合うなどと考えもしなかった。
けれど文句を言えないわけもあった。
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