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隠匿シリーズ☆番外編
第2章 王子様の憂鬱
ラインハルト王国の首都メフィスから馬車を丸一日かけて走ったところに、森に囲まれる白亜の邸がある。
通称『迷宮の邸』と呼ばれる建物のある一帯は、マーシャル侯爵が治める領地だ。
レオは馬車から降り立ちひとつ息をつき、重い足取りで邸の家令が開けた扉を潜った。
と、ほぼ同時。
胸に飛び込んでくる人物を衝撃と共に受け止めた。
「レオ! 来ると聞いて待ってたわ!」
「よく来たな! 逢ったのは三ヶ月前だが、ここに来るのは二年ぶりくらいか?」
飛び込んできた人物の後ろ。老紳士がレオの肩をバシバシと叩く。
「……お元気そうで何よりです。お爺さま、お婆さま」
そう、ここは母の両親──レオの祖父母が暮らす邸である。
父方の祖父母は既に他界し、レオにとって唯一の祖父母になるわけだが──。
「レオ、疲れてないか? ないな! さっそく一杯付き合え!」
「いえ、私は妻を迎えにきただけですので」
「固いこと言うな。テレサも儂もお前が顔を見せるのを心待にしておったんだから」
「そうよぉ! ゆっくりしていきなさい」
こうなるだろうとは予測していたが、やはりかとレオは諦めて従った。
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