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隠匿シリーズ☆番外編
第4章 女たちの反乱
そこには王城で働く若い庭師が、摘んだばかりと思われるバラを抱えて立っていた。確か彼の名前は……。
「カーシー……だったわよね? どうかしたの?」
「覚えててくださったんですか!?」
一介の庭師の名を王太子妃が覚えているとは露ほども思っていなかったらしく、カーシーは感激に声を裏返す。
王城にはたくさんの使用人が働き、王や王妃、そして訪れる人々のために心血を注いでいる。
一人、一人の名を覚えるのは大変だが、使用人たちがいてくれるからこそ、アリエッタもなに不自由なく過ごせているのだ。
名や顔を覚えるのは当然であり、人と向き合うのに不可欠だ……というのがアリエッタの信条だ。
「ええ、もちろんよ」
にこやかに対応するアリエッタにカーシーは僅かに頬を紅潮させる。
「あ、あの……。これ、宜しければどうぞ」
「私に?」
カーシーは抱えるバラの花束を差し出してきた。
「はい! 綺麗に咲いておりましたので。お忙しいアリエッタ様のお慰めになれば……と」
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