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仔猫と狼
第14章 進行
「お疲れ様です。」
いい声とともに鳥居さんがスタジオ内に入ってきた。
「鳥居さん、お疲れ様です!」
いらぬ媚びを売るような声で話しかけた。
鳥居さんには必要ないけど、スタッフの皆さんにはまだ本性はバレてないから、まだこのスタイルでいくしかない。
あたしのこの媚びを売るような声のトーンに鳥居さんは一瞬驚いた顔をしたけどスルーすることに決めたようだった。
「高瀬さんお疲れ。」
返事を返してくれた後鳥居さんは椅子の端に座った。
もちろん私はその横に座る。
様子を確認すると鳥居さんの機嫌はとてもいいようだ。
私は、なかなか片岡ちゃんに会えなくて調子がてないというのに。
「今日鳥居さん機嫌いいんですね。」
多少の嫌味も込めて言った。
「そうか?」
鳥居さんは気がついていないようだった。
「そうですよ。私なんて、会いたい人に会えなくてテンションだだ下がりだって言うのに。」
声を潜めて答える。
片岡ちゃん、今日こないのかなぁ…。
高校生だし…収録は後日とか?
「片岡は、今日6時過ぎにくるぞ。」
「え…っ。」
「?」
まさか、他人を気遣うような回答をしてくると思わなかったから素が出てしまった。