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仔猫と狼
第15章 足音
僕は案外、長く彼を見てきた。
この業界に長くいると様々な役者に会う。
売れたことによって、向上心を捨てた奴。
売れないと諦めて業界を去る奴。
主役をやらずに、脇役に甘んじている奴。
そう、様々な役者と仕事をこなしてきた。
勿論、真面目な奴らも沢山いたが、その真面目さが実ることなく散っていった奴が1番多い。
変わらないままでいてくれる奴は存在しない。
今まででわって欲しくないと思った役者は皆変わってしまった。
それは、今の声優のあり方のせいでもあるだろう。
でも、俺たちはアイドルじゃない、役者だ。
キャーキャー言われるのは仕事じゃないんだ。
演技に磨きをかけていくのが俺たちだ。
この思いに同調してくれていた、鳥居くんはものの数年で変わった。
徐々にではなく、ある日突然。
変わってしまった君は、一体何を抱えているんだろう。
ずっと心配で見ていた。
でも、片岡ちゃんと出会ってからの君は時々、昔の君に戻る時がある。
上手く隠せてると思ってるみたいだけど、ばればれだ。
僕は、昔の彼に戻してくれると信じているよ。
「片岡ちゃん。」