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仔猫と狼
第15章 足音
俺は、監督に投げかけられた言葉を反芻した。
片岡が俺に与える影響…。
俺は…。
「鳥居君。僕は昔の君の方が好きだよ。」
帰る時にそっと結城さんに告げられた、この言葉。
つまり、今の俺は求められていない…。
目の前が暗くなるような思いがした。
イラつく…。
しかし、何にイラついているのだ。
「あの…、あの、鳥居さん!」
片岡が強く呼ぶ声で、ハッとした。
気がついたそこは、いつのまにか片岡のマンションの前だった。
俺は無意識のうちに、車でここまで来ていたらしい。
助手席には、俺に手を掴まれた片岡がいた。
俺に掴まれて手が赤くなっているのにもかかわらず、片岡は俺を心配そうな顔で見ている。
初めて会った時はあんなに自信なさげなみすぼらしい表情だったのに。
くそっ
俺は、そのまま片岡の手を掴んだまま、呼びかけには答えず車を近くの有料駐車場に停めた。