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仔猫と狼
第16章 こぼれ落ちる
全てが終わっていることがわかり、ソファに座ろうと振り返ると私は心臓が止まったかと思った。
そこには、鳥居さんが横になって寝むっていた。
「きれい…。」
横になっている彼の近くにそっと座り、顔を観察する。
服装は昨日と違っていた。
一旦、家に帰ったのだろうか。
それよりも寝ているこの人の横顔は、今までのどの時よりもきれいだった。
思わず触れたくなり手を伸ばすと掴まれた。
「あ。」
「…。」
「ごめんなさ…。」
勝手に触れようとしたことを謝ろうとしたら、そっと抱き寄せられた。
「鳥居さん?」
「ごめんな…。」
そう呟くと頭にそっとキスを落とす。
たったそれだけのことなのに、私は昨日のことなどなかったように幸福感に包まれた。
まぁ、もともと恨んではいなかった。
私の中で渦巻くのはひたすらの疑問だった。
でも、そんなことはどうでもいい。
今はこの幸福感に包まれたいと、そっと自分のわがままに素直になってみた。