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仔猫と狼
第16章 こぼれ落ちる
「いえ…・大丈夫です。」
俺を見つめ続ける目を見つめ返すことができなかった。
全てを見透かされるような…、ずっと忘れようとしていたあいつと同じ目だったから。
ひたすらに逃げたくだった。
感情をぶつけて、甘えて…。
都合が悪くなるとまた突き放して。
まるで子供みたいな…。
理性の働かない自分がひどくみじめで恥ずかしい。
ここには居たくない。
逃げるように立ち上ったくせに、その状態から動けない。
「一旦帰ったんですか?」
立ち尽くす俺にそう片岡は声をかけてきた。
「ああ。…車をな…。」
「そうですか…。ご迷惑をおかけしました。」
「いや…。」
昨日のは全部俺が悪いのに、こいつが謝る必要なんてどこにもない。
なのに、こいつは、昨日のことを一つも責めない。
悔しくて…。
こいつにはかなわない…。
そう認めた時、俺は泣いていた。