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仔猫と狼
第16章 こぼれ落ちる
目を離したらどこかに消えてしまいそうで…。
もう、どこにも行って欲しくなくて…。
でも、そんなことは言えないから行動で表して。
そんな傲慢な感情を持ったまま、ひたすら鳥居さんを私は見つめ続けていた。
見つめ続けていた鳥居さんは、涙を流し始めた。
まるで汚れの知らない子供のような純粋で透明な涙…。
私には流すことのできない涙。
羨ましくて。
触れたくて…。
そっと、鳥居さんの手の甲に触れた。
私の指先が彼の皮膚に触れた途端、弾かれたように手を避ける。
「あ…。」
私はその手を追うように立ち上がり、再び彼へと手を伸ばした。
今度こそ本当の彼に触れることができる…。
そう、嬉しくなった。