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第16章 こぼれ落ちる

自身が泣いていることにも驚いたが俺に触れようとしてくれた片岡にも驚いた。















反射的に避けてしまった手が気まずくて、そっと片岡を盗み見ると座っていたはずの片岡はいつの間にか立ち上がり、再び手を伸ばしていた。














俺をうらやましそうに見上げる瞳はやっぱりあいつにそっくりで、苦しくて。















ああ、このぐちゃぐちゃな感情が溢れて涙になったんだ。














なんて、どこか他人事みたいな思考がめぐる。















片岡の伸ばす手を今度は甘んじて受けた。















伸ばされた手は俺の頬に優しく触れる。















起きたばかりの人肌は熱っぽくて、涙に濡れた頬には心地よかった。















ゆっくり目を閉じ、俺に触れている片岡の手に自分の手を重ねる。















「ふっ…。」














思わず自嘲的な笑みがこぼれた。















結局は否定しながらもずっと求めていたのだ。















ぬるま湯のようなこの気持ちを…。